第8回「モノ」を言う‼若手司法書士の進言

 とある大学病院でのことです。外科医が不足していたため、外科医の育成に力を入れようとして、たくさんの海外でも有名な論文を発表されておられた有名な外科の大学教授を、その大学病院に来て頂き、講義もして頂いておりました。ある日、その大学病院に居た外科医の医師が学会に出席するため、手術の日は不在となり、是非、その有名な外科の教授に手術をお願いすることになり、それほど有名な教授の先生は、どんな手術をするのかと、たくさんの医学部生、外科医が集まり、手術の当日を迎えました。

「先生、準備ができたのでお願いします!」と呼びにいっても、教授の先生はご自身の部屋から出て来られません。すると、その教授の先生がおっしゃった言葉は「私は、論文はたくさん書いてあるけど、実は、一度も手術したことがないんだ。申し訳ない」と。これは、実話です。実際に手術の経験がなくても、書籍を読んで研究すれば、優秀な論文が書けるのですね。

民事信託の業界にも同じ事が言えます。

「○○銀行△△支店信託推進部」の方が、司法書士会の研修の「民事信託の実務」で講師として来られました。(私は、なぜ、銀行マンから法律実務を学ぶのか?と思いましたが)話を聴くと、「数十件の実績が我が支店にはあります、案件はお任せ下さい」と、おっしゃっていたので、私が民事信託の質問をしても、曖昧な回答。言葉が返って来ません。

案件があったので、「○○銀行」は、民事信託に明るい事は知っていたので、本店の担当の方に連絡させて頂いてみると「先生がいらっしゃる地域では、実績がないので、こちらにご連絡下さい」と、丁寧にご対応頂きました。

民事信託の業界は、それが顕著です。実際に実務をしていなくても、書籍が何となく書けて、実際に出版されております。そういった書籍が出回っているから、「民事信託は危険だ」

「民事信託は危ない」と言った声を聴くのかもしれません。確かに、そのような書籍を読んでも、さっぱり何を言いたいのか、書いたご本人が分かっていないのでしょうから、無理もないかもしれませんが。