「大切な会社を守り抜き、長寿企業を作り上げたい」、
経営者の方々の、そんな想いに寄り添います。
多くの中小企業は「オーナー企業」と呼ばれる、株主と経営者が同一人物である小規模な会社であり、かつその「オーナーさん」は、会社に対してとても大きな影響力を持っています。そうすると、その一人の人が重病や認知症になったり、あるいは死亡された際には、たちまち会社の運営が困難になってしまいます。しかし、会社は個人だけのものではないので、その人の死後もずっと続けていかなければなりません。そのような将来起こり得るリスクに対応するための取り組みを広く「事業承継」と呼んでいます。事業承継にはいくつかのリスクや課題があり、よく言われているのが①相続税・贈与税の問題をクリアしてどう後継者に株を引き継ぐか?②相続で株や土地といった経営資産の分散をどう防ぐか?③後継者を誰にすべきか?もしくは後継者が育っていないがどう対応するか?といった課題ですが、実際には他にも様々な要素が絡み合っており、例えば税金や法律の専門家だけで対応できるというような単純なテーマではありません。そんな問題を解決に向かわせるためにも、未来信託や一般社団法人の制度などを役立てることができます。
■未来信託を活用して事業承継の問題を解決した例
Case1:自社の株価が低いうちに、株式を後継者に贈与したい
私は自動車部品製造業を経営しています。受注が拡大しているため新たに新工場を建設するなど事業を拡大していく予定です。一方で将来的には長男に事業承継をする予定ですので株価が低い今のうちに自社株を贈与したいのですが、株の議決権は当分の間、自分が保有しておけないかと思っています。何かいい対処の仕方はありませんか?
会社を今後拡大していく予定がある場合、もしくは会社が成長途上にある場合で、かつ後継者が間違いなく承継されるというケースでは、株価が低いうちに後継者に自社株を譲渡しておくことは有効な手段となります。未来信託を使うことで、株の議決権は現経営者に残したまま、株から配当を受ける権利などのみを後継者に渡すことができます。このことで税法上は贈与があったとみなされますが株価が低いため贈与税は抑えられます。ただ、平成30年に事業承継税制が改正されて非常に使いやすくなっており、一定の要件を具備した場合には、後継者にかかる相続税や贈与税が猶予や免除されるケースがありますので、他の制度との比較も必要となります。
Case2:経営を後継者に引き継ぎたいが株価が高いため自社株の議決権を渡せない
私は建築材料の製造業を経営しています。そろそろ長男に経営を任せ、社長業からの引退を考えています。しかし、株価も高く贈与税がかかることや、本当に長男が経営できるか心配な部分もあります。
未来信託を活用すれば、自社株の議決権のみを後継者に渡すことで株を贈与しなくても議決権のみを後継者に渡すことができます。いったん長男に社長を任せてみてうまくいかない場合には信託契約を解除すれば経営権を取り戻すことも可能で、そのうえで別の後継者を指定するかM&Aなどの方法を検討します。事業承継税制を使えば仮に株価が高くても贈与税を猶予したまま株式を後継者に渡すことができますが、この場合にはいったん手放した株式の議決権を取り戻すことはできません。仮に事業承継税制を使いたいという場合は、いったん未来信託を使うことで、後戻り可能な状態で後継者に経営を任せてみて問題がないと判断をしたところで事業承継税制を利用して株式を贈与することがベストな方法と考えます。
Case3:株や不動産などの経営資産の分散を防ぎたい
私は飲食店を多店舗展開で経営しています。後継者は次男にと考えていますが、保有している資産は、自宅以外は自社株と不動産のみですが、不動産は店舗として会社に賃貸借しています。相続のときにサラリーマンになった長男や嫁に出た長女などにも経営に使用している資産が渡ることで会社の運営に支障がでないか心配です。
我が国の相続制度には問題があり、何度か相続を繰り返すことにより株や土地などの経営資産が分散していく可能性が非常に高くなってしまいます。遺言書を用いて後継者に経営資産を集中させても、遺留分という形で一定割合は他の相続人に遺産を渡さなければいけないケースもあり、万全な対策とはなりません。そのような場合にも、未来信託を活用して、株の議決権や不動産の管理運営を行う部分と主要な財産の権利を後継者に、配当や不動産の収益を受ける権利の一部をその他の相続人に与えるなどによって経営資産を実質的に分散させないよう対処することもできます。
私は住宅関連の建設業を経営しています。次は長男を後継者に考えていますが、長男夫婦には子供がいません。そのため、そのあとは次男を後継者にと考えています。自社株が長男の死後、長男の嫁に相続され、その後には嫁側の親族に渡ってしまうことを懸念しています。
長男は結婚しているが子供がいないというようなケースでは、遺言で株に関する相続人を長男に指定することまでは可能ですが、その次の代の相続までは関与できません。すなわち、長男を後継者にして株を相続させても、法定相続制度に従うなら、その株が長男死後には長男の嫁に相続され、さらにその次には長男の嫁の親族という、全く会社に関係のない人たちに相続されてしまうことになります。未来信託を使うことで、長男の次は次男が株を引き継ぐよう当初から設定しておくことが可能となります。
個々の状況に合わせて自由自在、100%オーダーメイドの対応が可能になります。
上記のケース以外でも、従業員を会社の後継者にして資産はご子息にというケース、親族をいずれ後継者にしたいが育っていないため、いったん従業員を中継ぎ経営者にし、その後は親族に戻したいなど、未来信託を活用すれば、様々な状況に対応することも可能となります。経営資産だけではなく、経営に使用されていない資産も含めどう次世代に引き継ぎ、守っていくかということについて、資産を管理する一般社団法人を立ち上げるなどの方法を、未来信託と組み合わせるなどにより、実に様々ケースに応じてオーダーメイドの対応が可能となります。