―『モノ』を言う‼闘う若手司法書士からの進言―第5回

少し前に「和歌山のドン・ファン」の事件、事故が話題になりました。ここでは、遺留分とは関係のない話になりますが、「和歌山のドン・ファン」こと野崎さんは、「自筆証書遺言」を遺されており、遺言の内容が「妻に全ての財産の半部を相続させる。その余は田辺市に遺贈する。」という内容だったそうです。ご存知の方もおられると思いますが、『この「自筆証書遺言」は、無効だ。』と、主張してきた方がいました。子供もいないのに⁉じつは、野崎さんのご兄弟が遺言書の無効を主張してきました。

そうです、この「自筆証書遺言」が無効であれば、法定相続となり、妻4分の3、兄弟4分の1となります。兄弟が相続人となり、野崎さんの相続財産を相続できます。

ご兄弟さんの無効主張の趣旨は「兄は、税金をとる田辺市を嫌っていた。その大嫌いな田辺市に遺産を遺す訳がない」というものでした。その後、紛争(裁判)になったか定かではありませんが、「自筆証書遺言」の遺言執行者によって、内容どおり執行はされた様です。

「遺言書」があっても、やはり「争族」は発生しますね。

「笑う相続人」と同じように「相続人を起こす人」に出会ったことがあります。相続人さんは、長男、長女、次男の3人兄妹でした。3人兄妹さんは皆さん、正月、盆には、ご実家(被相続人でいらっしゃるお母様が一人暮らしの家)に、集まって、ご家族間もそれぞれ仲がよかったようです。しかし、お母様が亡くなられた途端、次男の嫁が豹変しました。遺言書もなかったので、長女、次男は、他の県で生活しており、また長男の嫁やお子さんが頻繁に、お母様の世話をしていたので、長男に任せるという事で話はまとまり、「遺産分割協議書」を私が作りかけた時に、次男の嫁から私の元に「先生、まだ、夫が言いたいことがあるから、相続手続きは待って下さい!」と強い口調で電話を頂き、私は「貴方は、相続人さんではないですよね、次男さんにもOkを頂きましたよ」と、伝えると、「夫は、気が弱いから、義兄、義姉に言い包められた被害者ですよ、夫にも平等な相続権が法律で護られているから、私が代わりに言ってあげているのです!」と、言われ、「先生、相続の話は私が受けますので、わたしに連絡して下さい」と。「被害者ねぇ⁉」と、そこで私は何も言わず、「また、ご連絡します。」といって、電話を切り、相続人である長男さん、長女さんに、次男さんの嫁のお話をしたところ、「あぁ、なるほど。わかりました。」と、異口同音にそれぞれ

納得⁉されたように、「次男の嫁さんの言い分を聞いてあげて下さい、ご迷惑をお掛け致します」との事でした。

私も相続人ではない人の意見を聞くのは納得がいかないので、次男さんに直接お電話したら、「申し訳ありません、妻の言う通りで大丈夫です」との返答でしたので、これ以上、

何かする事はできないので、「次男の嫁」の言い分どおりに「遺産分割協議書」に相続人の皆さまに、ご署名、実印で捺印頂き、どうしても気がかりでしたので、次男さんのお宅まで私が「遺産分割協議書」をもって行き、私の面前で次男さんにご署名、実印にて捺印頂きました。

そのときも「次男の嫁」は、同席して、「先生への報酬は、義兄に請求して下さいね」と、あの電話の声の主とは、まるで違う、愛らしい声でした。

昨今、法律番組で権利について安易な説明をしている法律家がいますが、あまり良い方向に世の中がいっていない気がします。

必要以上に、声高に権利を主張する者が得をする、そのような世の中は、何処か、おかしい感じがするのは、私だけでしょうか。