―『モノ』を言う‼闘う若手司法書士からの進言―第1回

 担当:司法書士 日下 淳(協同組合親愛トラスト副代表)

皆さま、はじめまして。連載「天下の悪法“遺留分”を回避せよ! “How to Avoid Bad Law!”」の監修担当をさせて頂く司法書士の日下淳と申します。若手と言いましても現在41歳であり、大学は法学部法律学科でしたが、法律より法制史、比較法学、政治学を主に専攻しており、また「政治学のディベイト」のゼミに参加しておりました。日本人には「ディベイト」と聴くと「討論・議論」と粗々しいものとお考えですが、実は、事前に「反対派」「賛成派」の立場に分かれて、与えられたテーマに従い論点を決めて、「ジャッジ」の方々のより多い賛同を得られた方が勝ち、という、いわば言論のスポーツです。

面白い事に、例えば、自分が「少年法の厳罰化」に内心は「賛成」だとしても、そのディベイトでは「反対」の立場で、ディベイトをしていくと、新たな発見があり、「立場で物事の見方が変わる」ということが、体感でき、とてもよい経験をしたゼミでした。

また、大学卒業後は呉服の営業職など接客業に従事しておりまして、生粋の法律専門家ではないかもしれませんが、生業は信託であり、司法書士であります。

折に触れ、接客業のサラリーマン時代の破天荒な上司の話、上手い値引き交渉術等々を交えて法律以外の面の話もさせて頂こうと思います。最後まで、お付き合いよろしくお願い致します。

では、私の本論に入ります。皆さん、「相続」という言葉をよく耳にされると思います。「相続」とは、何でしょう?この質問にすぐに回答できる方は実は、法律専門家にも少ないのではないでしょうか。正解は、法律用語でいうと『事実行為』です。「相続」は「法律行為(契約など)」ではございません。人が亡くなった事により、亡くなった方の

権利や義務(積極財産及び消極財産)が、亡くなった方の元から離れるという事実を言い(故人の権利能力の喪失)、その権利や義務(積極財産及び消極財産)が刹那に宙に浮いた状態を、誰が引き継ぐかという、現状(事実)を言います。

よって、「遺言書」があれば、その亡くなった方の遺志に従い、財産承継が行われます(相続が完了)。「遺言書」がなければ、日本の民法(相続法)という法律によって「法定相続制度」に従わざる負えない状況になります。ご丁寧に「法定相続分」という法律が認めた相続財産に対して、相続人が権利を主張できる「取り分」まで保証してくれます。

お分かりのように、この時点で既に「争う相続」=「争族」が発生する状況にあります。仲の良い相続人さん達でしたら、「遺産分割協議」によって、それぞれに譲り合い相続財産を分けることができますが、声高に権利を主張する者に変貌する相続人が現れます。故人が築かれた財産なのに、亡くなる事によって権利を失い、子孫のためにと財産を築かれたにも関わらず、何もしなければ、法律に従わざるしかない相続財産。

相続法制定当時は、「争いがないように」と、法定相続制度が制定された様ですが、何だか、矛盾した、「おせっかいな」制度に、現在ではなってしまったように思います。

★注釈

「権利能力の原則」

⇒ 出生とともに、所有権等の権利を取得、又は義務を負う立場(主体)になれること。

(例)出生したての赤ちゃんも不動産登記の名義人になれる。

⇒ 対して、権利能力がなければ、不動産登記名義人になれない。

(例)法人登記のない、法人は不動産登記名義人になれない。

法人として財産は所有できない。