マリンの部屋番外編:5分間動画シリーズの解説第3回
第3回の解説よ!
今回は「世界の金融制度の違い」。
街の質屋さんからイスラム金融までってサブタイトルに書いてあるように、今回は世界を股に掛けたお話!
鴛鴦の物語には、アラブの王族からサラ金の社長まで、いろんなキャラクターが登場しているけど、そのお話とも関係するからね、
これも歴史と同じで、今の日本の金融制度が全てだって思い込んでいる人が多いので、意外と知られていない話みたいだから、覚えておいて損はないと思うよ。
さて、街の質屋さんね。
最近では質屋さんって、高級ブランド品なんかを安く売ってくれるお店ってイメージになって、あまり金融屋さんって感じじゃなくなっちゃってるみたいだけど、本来は「質権」という制度を利用してお金を貸す仕組みなのね。
つまり、このスライドだったら、お金を借りたい人が自分の持っているバイオリンを質屋さんに持ち込んで、それを「担保」にしてお金を借りるの。
それで、お金に利息を付けて質屋さんに返せばバイオリンは戻ってくるし、返せなかったら「質流れ」って言って、バイオリンは質屋さんのものになっちゃうのね。
だから質屋さんは、バイオリンの価格よりも少ない金額を貸している限りリスクはないし、お金を借りる人も最悪でもバイオリンが返ってこないだけなので、実質的に少し安い値段で売ったのと同じことになって、それ以上に追及されることはないの。
そうして「質流れ」になった品物が、時価よりも安く市場に出回って、また誰かが買って使うんだから、ある意味では極めて健全な金融制度なのかも知れないね。
ところが、我が国で普通に「金融制度」と言われている仕組みは、質屋さんのやり方とは違っているの。
金融機関からお金を借りる時には、普通に「担保」とか「保証人」とか取られるよね。
このスライドにあるみたいに、担保と保証人は、貸している側から見たら「保険」みたいなもので、確かにそういった「保険」があるから低い金利で貸せるっていう一面もあるんだけど、本来の金融っていうのは、例えば個人だったらその人の収入、会社だったらその会社の事業から生み出されるお金を返済に充てるべきで、担保と保証人がなければ貸さないって言うんだったら、何も考えないで融資の是非を決めちゃえるってことにならないのかしら?
我が国で一般的に使われている「住宅ローン」だけど、実はこれ、本当の意味での住宅ローンじゃないの。
だって、金融機関はAさんにお金を貸して、確かにAさんはそのお金で住宅を買うんだけど、もし返済ができなくなったら、金融機関はその住宅を競売して換金するだけではなくって、住宅以外のAさんの全財産はもちろん、保証人Bさんの全財産まで取り上げることができて、しかも住宅を競売する前にでもAさんやBさんの住宅以外の財産に強制執行することもできてしまうのよ。
つまり、金融機関がAさんに貸しているお金と、Aさんが買った住宅には直接的には何の関係もない、単なる「普通の借金」に過ぎないってことなのね。
もちろん、金融機関にとって「保全」が効いているから金利は安いというメリットはあるんだけど、これだと、ある意味では質屋さんよりもキツいんじゃないかしら?
このような、借りている人や保証人の全財産が「保全」の対象となっている貸金のことを「リコース・ローン」と呼ぶの。
リコースとは「遡及する」という意味だから、要するに最後の1円まで回収しますよ、って意味になるのかな。
それに比べて、アメリカでの住宅ローンの主流は「ノンリコース・ローン」と呼ばれるもので、これだともしAさんが返済できなかったら、金融機関は住宅を取り上げるだけで、Aさんの他の財産には手を出さないし、保証人も原則は取らないから、言ってみれば人間ではなく住宅に融資しているって感じになるのね。
つまり、Aさんは返済できなかったら家の鍵を渡したら終わりってことだから、質屋さんとよく似た金融制度なの。
もちろん、金融機関側としてはリスクが高い融資になる訳だから、審査を厳しくしないといけないし、金利も多少は上がるのかも知れないけれど、本当はこれこそが「住宅ローン」と言える仕組みだと思うわ。
実は信託財産に対する融資の本来の形はこれなんだけど、我が国では「信託財産」自体に法人格が認められていないこともあって、完全に間違って認識されちゃってるみたい。
さらにさらに、鴛鴦第2章で少し出てきた「イスラム金融」と言う仕組みもあるのよ。
イスラム社会ではコーランの教えで「金貸し」は禁止されているので、金融機関はあってもお金は貸せないんだけど、でも住宅ローンみたいな仕組みは存在するのね。
それはどうやるかって言うと、金融機関が住宅を購入しちゃって、入居者に住まわせておいて、入居者から一定の金額を定期的に受け取って、それが契約期間まで無事に支払い終わったら、その住宅は入居者のものになり、支払えなかったら退去するだけっていう、本当にシンプルな仕組みなんだけど、実はこの仕組み、凄く優れていて、双方にリスクがなくってメリットの方が大きいのよ。
だって、そもそもお金を貸していないんだから、不良債権なんて問題は起きないし、入居者も契約満了まで一生懸命支払いをすれば住宅は自分のものになるんだから頑張るでしょうし、金融機関も入居者が払ってくれなかったら取り上げて別の人を入居させれば終わりなんだから。
さて、ノンリコース・ローンとかイスラム金融とか、世界には優れた仕組みが存在しているんだけど、我が国ではそれを言う人はほぼ居ないわね。
もちろん制度の違い、特に我が国は税制が少し特殊で、少しでも利益を出したら贈与税や法人税がかかってしまうという制度だから致し方ない面はあると思うんだけど、それを差し引いたとしても、正直なところ世界の金融制度から見れば相当に遅れていると言うしかないかも。
信託とか一般社団法人なんかも同じなんだけど、我が国で信じ込まれている常識って、意外と国際的には特殊だったりすることがあるので、外国の制度は勉強しておくべきだと思うよ。
これも国家試験では出題されないから、誰も勉強しようとしないんだと思うんだけど、社会の役に立つためには必要な知識なの。
ではまた明日!
※狭い考えはヤメにして、世界に目を向けようね!!