マリンの部屋番外編:5分間動画シリーズの解説第4回

第4回の解説よ!

今回は「信託って何?」。

「信託」のことを5分間で簡単に説明するって、実は凄―く難しいのよ。

おそらく、それを本当に5分間で話せる専門家は、世の中にほとんど居ないって言っても間違いはないと思うの。

それと、信託って日本ではまだ新しくて馴染みの薄い制度だし、考え方の古い人たちは完全に間違って解釈しているみたいで、しかもその人たちがそれなりに偉い先生方だったりするもんだから、余計にややこしい話になってしまうのね。

でも、マリンは何とか頑張って、5分間で信託の仕組みを説明してみるわ。

まず、信託のお話に入る前に、民法の世界の「所有権」の仕組みを説明させてね。

私たちが普通に暮らしている世界で適用される法律は「民法」で、その世界には「所有権」とか「所有者」っていう言葉があるの。

そして「モノ」には所有権があって、人間か法人か誰かが必ず「所有者」ということで、その「モノ」の権利と名義の両方を持っていて、それがスライドの図みたいに一体化しているから、とってもとっても強い権利になっているのね。

だって、所有権には国家ですら簡単には手が出せないんだから、それはもう強大な権利なんだよ。

そんな強大な権利だから、所有者が複数になって共有物化したら共有者全員が合意しないと実質的に売ることができなくなっちゃうとか、認知症になったら後見人を付けないと財産が凍結しちゃうとか、相続になったら国が勝手に決めた相続人が急に登場してきちゃうとか、とっても不便な部分があるのね。

これが一昔前の時代であれば、本人の代わりに家族とかがサインをしたりハンコを押したら何とかなっていたのが、今では「コンプライアンス」って言って、変にキッチリとしたことをさせようとする風潮になったので、その不便さが際立ってきたのと、テレビの影響もあるのか、変に権利意識だけが高まってきて相続で揉めるようになったこととかで、所有権自体の在り方に問題があると考える人たちが出てきているの。

そして「信託」の登場!

実はこの「信託の仕組み」自体の解釈について、いろいろと違う意見を言う人たちも存在するので、もしかしたら別の考え方を持っている人も居るのかも知れないけど、マリンたちの考えている解釈でお話させてもらうわね。

まず信託の根本的な仕組みは「民法の世界にある財産を信託法の世界に移す」「所有権も所有者も一時的に姿を隠して、信託財産は誰のものでもない財産になる」「信託された財産に関しては権利と名義が別々になって、実質的な権利は受益者が持ち、受託者は財産権のない名義のみを担うことになる」ということなの。

きっと、大学の法学部とか国家試験の受験とかで民法を勉強してきた人たちにとっては違和感バリバリなんでしょうね。

でも、これが昔、十字軍の兵士たちが考案した信託の仕組みというものなんだから、理解してもらうしかないわ。

ちなみに、信託はいつの日にか終了するので、信託が終了したら元の民法の世界に戻って、所有権も所有者も復活するから、まさに「所有権や所有者は一時的に姿を隠している」って感じなのね。

信託された財産は受託者が「代行機能」で管理することになるから、元々の所有者だった受益者が認知症になったとしても何の影響も受けないの。

だから認知症対策ということで「家族信託」をする人が増えているのね。

そして、信託財産は民法の世界には存在していないから、成年後見人の管理下には置かれないということになるの。

もちろん、例えば受益者に受益権として金銭が支払われたとすれば、その金銭は信託の世界から民法の世界に戻ってくるから、被後見人でもある受益者の生活のために使う権限は成年後見人にあるんだし、信託が後見制度を邪魔するっていうことはなくって、むしろ共存すべきものだと思うのね。

当たり前のことなんだけど、信託の受託者は信託財産の管理権限があるだけで、後見人とは違って「代理権」はないので、そこは勘違いしないで欲しいの。

もちろん「代行機能」を使った認知症対策も重要だけど、信託の本当の威力が発揮されるのは「承継機能」なのよ。

信託をした後は、信託財産は誰のものでもない財産になって、実際の財産権は受益者が持っている受益権ということになるんだけど、その受益権の行方は信託の世界の中で決められるから、民法上の相続にはならないのね。

実はここの部分を勘違いして、受益権も相続されると思い込んじゃっている人が多いんだけど、受益権は民法の世界ではなくて信託法の世界に存在しているんだから、よく考えてみたら、これも当たり前のことだわね。

つまり、受益権は信託契約とかの「信託行為」で定められた通りに承継されて行って、相続の規定とは関係なく自由自在に決められるもので、だから受益者連続(次の次の代の承継先まで事前に決めておける機能)とかの仕組みが可能になるの。

民法を勉強してきた人にとっては、相続ではない財産の承継なんてことが本当にできるんだろうか?って疑問に思えても仕方ないかもね。

でも、民法ではない財産の承継って、信託以外にも既に存在していて、別に珍しい話でも何でもないのよ。

民法以外の規定での財産承継の代表例が生命保険ね。

詳しくはまた別の動画で説明するけど、生命保険と信託とは構造がとてもよく似ているの。

そして最高裁判所は正式に「生命保険は相続ではない」という判決を出しているので、これはもう疑う余地はないのね。

信託については、制度が新しいことから、まだ裁判所の判決は出されていないけど、いずれは生命保険と同じような判決が出てくると期待していていいと思うよ。

今回ご紹介した「代行機能」「承継機能」以外にも、信託には「制限機能(受益権に制限を掛ける)」「集約機能(複数の権利を一つの名義に集約する)」「流動化機能(一つの権利を複数の受益権に分割する)」っていう、民法の世界では実現不可能な機能があるんだけど、それは追々紹介するわ。

いずれにしても、民法の不便な部分や理不尽な部分を解消するために、民法以外の制度を駆使するというのは素晴らしい方法だから、みなさんも親愛信託と生命保険をよく勉強して理解して欲しいの。

ではまた明日!

※愛と正義!理不尽な法律の規定にも、諦めないで立ち向かうのよ!!