マリンの部屋番外編:5分間動画シリーズの解説第2回

第2回の解説よ!

今回は「信託の始まりと歴史」。

十字軍から親愛信託までってサブタイトルに書いてあるように、また歴史のお話ね。

これも意外と知られていない話みたいだから、知っておいて損はないと思うよ。

で、どうして知られていないかって言うと、多分なんだけど、マリンが受けた司法書士試験も含めて、国家試験で出てくる法律って、今現在使われているものばっかりで、過去の法律が出題されることはないし、ましてや法律の歴史なんか全然どうでもいいから、誰も勉強しないってことが原因なんじゃあないのかしら。

でもね、本当にその法律の意味を知って、正しく使おうと思ったら、その法律の歴史から学ばないといけないんだよ。

ってことも、マリンは師匠の双葉梓先生に教わったんだけどね。

さて、信託の原点ね。

これも実は諸説あって、弘法大師だって言ってる人も居るらしいんだけど、普通に言われているのは12世紀頃のイギリスで、十字軍として遠征して行く兵士が使ったのが最初らしいの。

出征して行く兵士は、残される家族のことが心配なんだけど、財産の名義は自分だから、留守中に家族が財産を自由に活用することは難しいし、かと言って自分は帰って来れるか来れないか分からない、ましてや戦地で怪我をしたり病気になってしまって、帰って来ても自分で財産の管理ができない可能性もあるなど、とっても不安定な状況になってしまってるのね。

そこで、財産の「権利」は自分自身に残しながら、その「名義」だけを信頼できる友人に託して、自分の留守中の管理を頼むっていう仕組みを考え出したの。

そうすれば、兵士の留守中は「受託者」が適切に財産を管理して家族のために使ってくれるし、もし兵士が帰って来たら元の状態に戻し、帰って来なかったら家族の中の後継者に権利を渡し、さらに怪我や病気になって帰って来たらそのまま信託を継続すればいいので、どんな状況になっても対応できるってことなのね。

そして一番重要なのが、この「受託者」になる人は、兵士にとって絶対に信頼できる友人、すなわち当時だったら「ナイト」、今だったら「英国紳士」というような立派な人に限られるから、絶対に裏切ったりはしないということなの。

親愛信託の話をすると、時々「もし受託者が暴走したらどうするんですか?」みたいな質問をする人が居たり、専門家の中にも、受託者は信用できないって前提で、やたら重たい規制を掛けたり監視しようとする人なんかが居るんだけど、その人たちは信託の本質を分かっていないということなんだろうね。

さて、イギリスで信託の仕組みが考え出されてから数百年たった後、フランスでは革命が起きて、その後にナポレオン皇帝が登場するのね。

そして、ナポレオンは「ナポレオン法典」っていう法律を制定するんだけど、その中に「信託」っていう仕組みは採用されず、「相続」という制度の中では、亡くなった人の財産を承継する相続人を、亡くなった人自身ではなくて国が決めるのを原則とする制度を作ってしまったの。

これはきっと、ナポレオンにとって憎っくき敵国だったイギリスの自由闊達な信託の制度を取り入れたくなかったんじゃないかって思うんだけど、このナポレオン法典が、後に日本の明治民法のベースとされたので、やっぱり日本でも信託は取り入れられず、変な相続制度が出来上がっちゃったのかも知れないのね。

だから今でも法学部の偉い先生方はフランスの法律が最高と思っていらっしゃるみたいで、イギリス発祥で、民法の制度を超えて自由なことができる信託法を良く思ってはいないんだと思うわ。

そして一方、自由経済の国アメリカでは、信託が十字軍時代とは別の意味で大きく発展したの。

それは金融の世界で信託を使うっていう方法ね。

例えば一人の受託者が多くの委託者(兼受益者)から信託を受けたら、巨大な財産が運用できるようになって、それぞれの受益者が自ら働かなくても利益を生み出すことができるっていう、会社への投資と似たような仕組みを作れるの。

それが明治時代の中期くらいに日本にも入ってきて、それで今で言う信託銀行や信託会社を規制するために旧信託法ができたので、その影響で今でも信託っていえば金融行為、受託者と言えば信託銀行か信託会社だって思い込んでいる人が結構多くって、親愛信託の仕組みが理解され難い傾向があるみたいね。

さて、親愛信託の原点とでも言うべきなのが、同じアメリカで始まった「Loving Trust」だって思うの。

これは1965年に、ノーマン・デイシーっていう一般人の不動産屋さんが、「How To Avoid Probate(公開検認手続きを回避せよ!)」という著書を発売してベストセラーになったことから始まったのね。

アメリカでは人が亡くなって相続になると、プロベイト(公開検認手続き)という裁判所の手続きになってしまって、それに多くのお金と時間がかかって、とても不評だったので、信託の仕組みを使えばプロベイトを回避できるんじゃないかって、デイシーさんが提唱したって訳。

信託財産は契約でもって承継されて「相続」の対象ではないから、当然プロベイトにはならないんだけど、法律家ではない人が突然そんなことを言い出したもんだから、当時の法律界は大騒ぎで、何とかデイシー氏を退治しようとしたらしいわ。

でもね、やっぱり最後は国民の声が勝って、50年以上たった現在のアメリカでは信託が当たり前になっているわね。

その一つの原因が、通常なら「Living Trust(生前信託)」と言うところを、一文字変えて「Loving Trust(愛情信託)」にしたってことらしいので、何だか愛を感じて嬉しい話なの。

で、親愛信託ね!

ようやく日本でも、今から10年ちょっと前に信託法が大改正になって、信託銀行とかが取り扱う金融以外の信託が自由にできる時代になったの。

「家族信託」って言って、認知症対策オンリーの信託だけは最近増えてきている感じだけど、本当の意味の信託はそれだけじゃなくって、逆に認知症対策は信託全体の何10分の1の機能しか活かしていないのよ。

特に財産の承継に関しては、「相続ではなくなる」っていう凄い機能があるんだけど、まだまだ知られていないわね。

それと、親愛信託は十字軍の信託の理念を承継しているから、委託者と受託者との絶対的な信頼関係と「無償の愛」がベースになっていて、そこが何かと最近は問題が多い成年後見制度とは一線を画している部分なの。

でも、まだまだ信託を認めたくないっていう頭ガチガチの学者さんなんかも少なくないみたいだし、信託の仕組みを完全に誤解してしまっている専門家も多いみたいだから、本当の普及は今からかな。

でも、専門家のみなさんにとっては、まだあまり手掛ける人が居ないっていうのはチャンスだから、今からでも勉強してみてね!

ではまた明日!

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※マリンみたいに頭を柔らかくしないと、新しいことにはついて行けないわよ!!