リネージュ(Lineage)

~二つの会社と三つの家族の愛情物語~

はじめに

この物語は、前作で電子書籍化されました“Beautiful Dreamers”に続く、合宿研修の課題ドラマ化三部作の第二弾(実はもう一本あります)で、今からちょうど4年前の2016年9月3~4日に、新潟県長岡市で開催された合宿で出題された課題がベースになっています。

“リネージュ(Lineage)”とは、血族、血統、種族といった意味を持っており、自分自身の力では変えることができない宿命ということでもあり、この物語の主人公である中村綾香は、その持って生まれてしまった“リネージュ”に翻弄されることになります。

現代社会では、本来は“個”が重視尊重され、誰もが自由に自分の運命を選択することができる筈であり、日本国憲法の趣旨もそのようになっているのですが、残念ながら民法という法律の中には、まだ旧態依然とした“血族”“姻族”という考え方が根強く残っており、それが何の罪もない人たちの幸せを奪い、場合によっては必要のない不幸を生み出してしまっています。

綾香も、そんな“血の呪縛”がなかったとしたら、裕福な会社経営者の長女として、どんなに自由に自分自身の人生を自分で決めて、容易に幸せを掴むことができたでしょう。

しかし、綾香は弱い人間ではありませんでした。

だから、自分のリネージュを乗り越えて、自分自身の望む幸せに向かって懸命に努力します。

一方、綾香の恋人である上川雅樹は、何の呪縛もないにも関わらず、自分自身の能力を信じることができず、なかなか前に進むことができません。

そして、それぞれが中小企業の経営者である綾香の父と雅樹の母は何を思い、何を考えるのか。

そんな物語になっています。

綾香は恋人や姉などとLINEを使って会話をしますが、リネージュという英単語を二つに割ってみれば“LINE”“AGE”となります。

まさにLINEを駆使するAGE(世代)ということですね。

それに対して、綾香たちの親世代は、メールすら使えず、未だに電話で連絡を取っていますが、もうそんな時代ではなく、次世代にバトンを渡す時が来ているのです。

本作は、中小企業の事業承継と企業再編という、大変難しいテーマを取り扱っていますし、血族関係もかなり複雑になっており、最後の方でちょこっと登場する金髪の女性行政書士から提案される再編スキームなどは極めて先進的なものですので、一般読者の方には分かり難い部分があるかも知れませんが、そのあたりは読み飛ばしていただき、綾香と雅樹という若い二人の心の動きを中心に理解していただくとよろしいのではないかと思います。

それでは、リネージュの世界へ。

お楽しみください。