~歴史体験ファンタジー~ 田和家の一族

第2回

プロローグ2

令和元年10月

田和健人が水越春奈の居るガールズバーに行ったのと同じ日の昼間

親田(ちかだ)愛子(あいこ)行政書士事務所。

細身で生真面目そうな感じの男性と、その両親らしい老年夫婦が、金髪の女性行政書士に相談している。

「私は田和(たわ)圭司(けいじ)と申します。39歳です。妻と子と三人で、両親との二世帯住宅で暮らしております。今は、父の会社、株式会社田和計量器で専務取締役を務めさせていただいておりますが、私は高卒で学歴もなく、仕事の方もまだまだ修行中でして、早く父のような誰もに尊敬される経営者になりたいと、微力ながら日々頑張っております。私の心配事なのですが、実は私には3歳上の健人という兄がおりまして、以前は一緒に父の会社で働いていたのですが、10年ほど前に父と些細なことで言い争いになり、それ以来、家にも会社にも全く寄り付かなくなっていることです。実は最近、父が体調を崩しまして、入退院を繰り返しており、あまり考えたくはないのですが、父が万が一の事態になった際に、法学部中退で中途半端に法律を振り回すのが大好きな兄が、相続の事で何か言ってくるのではないかと心配しているのです。」

続いて、父親らしき老人が話を始める。

「私は田和(たわ)今朝蔵(けさぞう)と申します。今年75歳になりました。若い頃に小さな町工場から始めた事業が会社になり、今では数十人の従業員を抱えるいっぱしの企業にすることができましたが、これもずっと手伝ってくれた妻と次男のおかげだと感謝しています。私の心配事なのですが、次男からお聞き及びのように、長男の健人が少し性格的に問題のある人物でして、私の相続の際に妻や次男に何か理不尽なことを言ってくるのではないかということです。

司法書士の先生に依頼して、遺言は書きました。税金の関係もありますので、妻と次男に半分づつ相続させるという内容です。しかし、長男にも遺留分という権利があるのは分かっていますので、とても心配なのです。と言うのは、私の財産の大半が会社の株と自宅不動産で、恥ずかしながら役員報酬などで貰った金銭は、ほとんどが会社への貸付金となっており、手元に現金が少なく、もし長男が権利を主張してきた場合、会社が困った事態に陥る可能性があると思うのです。」

次に母親は話す。

「私は田和(たわ)景美子(けみこ)と申します。今年78歳になりました。若い頃からずっと夫の会社を手伝ってきましたが、昨年の春に脳梗塞で倒れまして、その後は物忘れがひどくなったこともあって、今は仕事から退いてノンビリ暮らしています。私の心配事も長男の健人のことです。

健人は法学部に入るくらいで、とても頭はいいのですが、ちょっと性格的に問題があって、夫にはいつも反発していました。幸い、次男の圭司がとても親孝行な良い後継ぎで、可愛い孫もできましたし、会社の従業員の人たちもとてもよくやってくれていますので、夫に万が一のことがあった時に、健人から次男一家と会社を何とか守ってやりたいのです。」

さて、登場人物が揃ったところで、物語がスタートする。

(つづく)