3分間動画シリーズ シーズン2実践編その23

緊急事態に備えるための親愛信託~許認可、資格などの承継に不安を持つ方のために~

動画は下記URLからご覧ください。

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今回は「緊急事態に備えるための親愛信託~許認可、資格などの承継に不安を持つ方のために~」として、親愛信託活用チェックシート会社法人編3―7「事業レスキュー信託」の内容を解説させていただきます。

3分間動画シリーズはシーズン2実践編その23です。

このチェックシートで七番目に位置していますが、これは会社法人編の中ではありながら、主として個人の資格や許認可に頼って事業を行っている個人事業者を対象とする親愛信託の仕組みで、事業信託と同様、おそらく現時点では誰も思い付いていない方法です。

世間では個人の資格や許認可に頼って事業を行っている例は決して少なくありません。

個人で開業している医師や税理士などが典型で、もし資格者が一人で事業を運営しているのであれば、その人が死亡したら、その瞬間からもう事業を行ってはいけないということになります。

例えば医師であれば、その医師が死亡した瞬間から入院患者に治療行為をすることができなくなるということですから、まさに人命に関わる大問題なのですが、意外と対策がなされていない分野なのではないでしょうか。

また、税理士などに見られるパターンなのですが、後継者となるべき子や孫が資格試験に合格できないままでいるというケースも少なくないと思います。

そんなケースで、もし税理士資格のある親が死亡したら、もう子や孫には税理士業務を行う資格はないのですから、その日から税理士事務所は廃業、顧客や取引先、そして主を失った従業員などは路頭に迷う羽目になるのです。

もちろん実際には、同じ資格を持つ別の事務所などが顧客や従業員などを引き取って事業を継続ということになるのでしょうけれど、すぐに対応できる訳ではありませんし、誰も引き受けてくれないという事態も考えられます。

資格によっては、家族などが資格者を雇用すれば何とかなるものもあるようですが、少なくとも税理士などは「名板貸し」と言って、そのような行為は違法ということになっていますから不可能です。

レスキューの必要性ですが、とにかく個人の資格者が死亡すれば一瞬にして全てが終わってしまうのですから、ご説明するまでもないと思います。

つまり有資格者Aの死亡によって、無資格者である遺族は一切タッチできなくなり、また引き受けたいと考えている有資格者Cにも事業を承継する法的権限はなく、勝手に事業を持って行くこともできないのですから、まさにデッドロックという状態になります。

そして将来、Aの親族であるBが資格を取得したとしても、もうAが行っていた事業を手放していたなら、それを取り戻すことは不可能なのです。

事業を法人化していれば、資格者の死亡で即座に事業が閉鎖されることは回避できますが、最近では医療法人や税理士法人なども「一人法人」を認めるようになっていますから、結局は「社員」が不在になって継続不可能になるというリスクは回避できません。

最も大きな問題は、このことにあまり誰も気が付いておらず、「何とかなるだろう」みたいな甘い考えでいるケースが圧倒的に多いということです。

確かに、元気に仕事している資格者が急に死亡するというリスクは大きくはないのですが、それでも数%の確率は存在しているのですから、リスクマネジメントの世界では当然に対応が必要な事象であることは間違いありません。

そこで親愛信託の登場です。

事業レスキュー信託は、事業を信託財産とする「事業信託」の一種で、信託のスタートを「今」ではなく「委託者の死亡時」としておくものです。

そのことから、遺言信託の活用も考えられますが、遺言は生前には公開されないのが原則ですから、信託の存在を明らかにしておきたいという意向があるなら「始期付信託契約」の方をお薦めすべきかも知れません。

いずれにしても有資格者Aは、自分に万が一の事態が発生した時には、同じ有資格者であり、かつ「信認関係」という深い繋がりのあるBに後事を託したいと考えた場合、Bを事業信託の受託者として指名しておくのです。

そうしますと、Aの死亡と同時にAが営んでいた資格事業はBに信託されて信託財産となり、以後はBが事業を運営し、そしてその利益に関しては事前の信託行為の内容に基づいて、受益者となるAの遺族と、Bが受ける受託者報酬とで分け合うということになり、これならAの遺族は相続放棄せずに債務を返済することができますし、Bも事業から受託者報酬を得ることができ、かつ将来にAの親族が資格を取得した時には事業信託を解除するという選択肢も生まれてくるという、まさに一石二鳥、一石三鳥の効果を得ることができるのです。

この方法は、例えばこのケースで言えばAとBが相互に事業レスキュー信託を行うということも考えられ、非常事態に陥った際の事業の継続、すなわち「BCP」の一種として、有資格事業に限らず広く活用されるべき仕組みではないかと考えています。

ただし、これは事業信託の宿命として、事業の特定の難しさ、受益権と受託者報酬の配分の決定、そして債権者との関係等々、信託行為の内容も含めて様々な部分での難しさがあり、かつ将来の受託者としての信認関係を保てる相手の確保という最大の問題がありますので、少しでも早い段階から準備を進めておかれることをお薦めします。

これ以上の内容を知りたい方、あるいはご質問、ご相談、さらに講演や原稿の依頼については、よ・つ・ば親愛信託総合事務所までお問合せください。

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