3分間動画シリーズ シーズン2実践編その11

カップルと親愛信託~入籍に関係なく適切な財産承継を実現する~

動画は下記URLからご覧ください。

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3分間動画シリーズはシーズン2実践編その11です。

今回は「カップルと親愛信託~入籍に関係なく適切な財産承継を実現する~」として、親愛信託活用チェックシート財産管理編2―3「ブーメラン型信託」の内容を解説させていただきます。

このチェックシートでは、資産承継編の三番目に位置しており、前回の「家督承継型信託」に続いて、民法の制度では絶対に実現不可能で、親愛信託の真骨頂である「受益者連続型」の本格的な活用場面が始まります。

「カップルのための親愛信託」という、協同組合親愛トラスト(よ・つ・ばグループ)代表理事である松尾陽子さんの著書があり、あらゆるパターンのカップルに対応するための親愛信託の仕組みが書かれていますので、是非とも参考になさってください。

さて、ここで言う「カップル」とは、主として法律上の婚姻関係にない人たちを指しています。

おそらく現代は、今の民法が制定された昭和22年の頃には誰も想像しなかった世界になっているのだと思います。

当時は、男女は一定の年齢になれば結婚し、そして複数の子を作るのが当たり前で、かつ一度結婚したら死別でもしない限り離婚や再婚はあり得ない、そういった「社会の常識」に反する人間は異常だ、くらいの感覚だったのでしょう。

しかし、ご承知の通り、現代はそうではありません。

今は夫婦別姓を求める人たちの声が日増しに大きくなってきていますし、また性別が違わないカップルが実質的な夫婦として一緒に生活することも普通になりつつあり、いずれも現在まさに訴訟にもなっていて、地方裁判所レベルでは違憲判決が出される時代に至っているのです。

しかし、民法の世界だけは昭和22年当時で時間が止まっているかのように、たった1枚の婚姻届、あるいは戸籍の記載がない人たちの権利は一切認めないという姿勢のままです。

そのため、夫婦別姓を望んで入籍しない、あるいは敢えて偽装離婚をした人たち、性別が同一のカップルなどは、民法上では赤の他人のままで、何等の財産的権利もありません。

一方、社会保険などの世界では実体を重視して入籍していない内縁配偶者にも権利を認めていますし、また自治体によっては性別の同じカップルに対して証明書を発行するケースもあるようで、ますます民法だけが時代遅れのままに取り残されている感が強くなってきています。

もちろん、民法の範囲内での手段として遺言を使う方法はありますが、遺言も所詮は相続制度の一つに過ぎませんから、遺留分という「天下の悪法」には抗う術もなく、結局は非入籍カップルの願いは叶わないまま終わってしまうのです。

そこで登場するのが、親愛信託の「承継機能」を駆使した「ブーメラン型信託」の仕組みです。

民法の世界では、仮にAがBに対して遺言で財産を渡したとすると、その財産を次はCに渡すためにはBが自ら新しい遺言を書かなければならず、かつBが遺言を書いたとしても、もしBの親族の中に遺留分を請求できる権利を持つ者が居た場合には必ずその者に財産を取られてしまいます。

元々はAの財産だったのに、一度Bの手に渡ったばっかりに、Aにとっては全く関係のないBの親族に財産が取られてしまうなど、本当に理不尽以外の何物でもないのですが、そういった事態を最初から想定してはいないであろう民法の規定では、当たり前のようにそうなってしまうのです。

ところが、信託の世界では、信託法91条という条文に従って、自分の死亡後の受益権の行方を何代も先まで指定することができますから、このケースであればAが死亡すれば入籍していない配偶者(民法上では他人)であるBに、そしてBが死亡すればAの親族であるCに受益権を戻すという内容を実現できます。

信託受益権に対して遺留分請求ができるか否については、現時点では裁判例がなく、未だに請求できると考えている専門家も多いのですが、受益者連続の二回目以降の受益権の移動については、それはもうさすがに「相続」ではないので遺留分請求の対象にはならないというのが多数説になっています。

そうしますと、このケースでAからBに財産が移動する際には、Bの親族には元々遺留分請求権がなく、その次のBからCに受益権が移動する際は「二回目の移動」ですから、やはり遺留分請求はできないという結論に達するのです。

この「ブーメラン型信託」を相互に行うことで、互いの財産を一度はパートナーに渡したとしても、その次は自分の親族に戻ってくるという仕組みを作り上げることが可能になります。

ここまでの仕組みを作っておけば、もう実質的に入籍の有無は関係なくなり、まさに「戸籍と財産」が切り離されることになりますから、親愛信託が最も役に立つ局面であると言えるでしょう。

ただ、細かい部分では、受託者になっている人が受益権の全部を取得すると、以後1年で信託が終了してしまうという「1年ルール」と呼ばれる規制が信託法の中に存在しますので、1年以内に受託者を次世代に交替するか、あるいは受益権の一部を誰かに譲渡して受益者を複数にするかという対策が必要となりますので、こういった長期間にわたる親愛信託を組む際には、最後まで責任を持って手伝ってくれる信頼ある専門家に依頼されることが肝要ではないかと思うところです。

これ以上の内容を知りたい方、あるいはご質問、ご相談、さらに講演や原稿の依頼については、よ・つ・ば親愛信託総合事務所までお問合せください。

お待ちしております。