3分間動画シリーズ シーズン2実践編その10

家督承継と親愛信託~必要なケースで“家督承継”を実現する~

動画は下記URLからご覧ください。

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3分間動画シリーズはシーズン2実践編その10です。

今回は「家督承継と親愛信託~必要なケースで“家督承継”を実現する~」として、親愛信託活用チェックシート財産管理編2―2「受益者連続型信託」の内容を解説させていただきます。

前回、「家族信託=認知症対策」と考えるのは、携帯電話の機能の中の通話機能だけをもって「これが携帯電話です」と言っているような滑稽な話であると申しましたが、この「受益者連続」こそ、信託の本当の機能への入口と言えるものなのです。

何故なら、この機能は民法上の遺言では不可能であると既に最高裁が結論を出しており、かつ生命保険をもってしても実現できないものであるからです。

このチェックシートでは、資産承継編の二番目に位置しており、タイトルは分かり易く象徴的に「家督承継信託」としていますが、必ずしも家督承継に限らず、あらゆるケースで応用できる受益者連続型信託の典型例として挙げていると考えてください。

さて、家督承継というと「家制度」と結び付けて、時代遅れでとっても悪い仕組みと頭から思い込んでしまう人も多いようなのですが、冷静に考えてみてください。

日本国憲法は個人財産制をとっていますから、財産を誰に承継させようと自由であるのが原則です。

つまり、家制度が嫌なら他の分け方をされれば良いだけのことであり、家制度で財産を承継させたい、承継したいと考える人の行動や気持ちを邪魔したり批判したりする権限は誰にもないのです。

例えば、いわゆる「旧家」の後継ぎの方が、先祖代々の大切な財産を最も信頼できる次の後継者に全部渡して適切に管理して貰いたいと考えるのは自然な発想ですし、また中小企業のオーナーが自分が作って大きくしてきた会社の株式を最も信頼できる後継者に承継させ、そして以後もずっと適切な後継者に承継させたいと考えるのは当然のことなのではないでしょうか?

しかし残念ながら、何度も申し上げていますように、現在の民法は「財産は相続人のもの」という前提で組み立てられていますから、旧家の当主や中小企業経営者の純粋で真っ当な願いを叶えることは難しいのです。

現行民法施行から70年を過ぎ、国民はすっかり洗脳されてしまったのか、さらにそれを煽るテレビの法律相談番組などからの生半可な法律知識を持ったことからか、変に権利意識ばかりが高まり、親の財産は当然に貰えると思っている者が増えてきて、不毛な相続争いが年々増えています。

そして現行の「相続対策」の唯一のツールである遺言では「遺留分侵害額請求」には勝てませんし、それに遺言自体が一代限りの効力しかなく、一度相続人に所有権が渡ってしまうと、その人自身が次の遺言をしてくれない限り、元々の財産所有者の希望が叶うことはないのです。

また法定相続制度の大きな問題点として、もし夫婦の間に子が居なければ、配偶者側に渡った財産が配偶者側の兄弟姉妹に渡ってしまうという、意外に一般人が気付いていない大きな落とし穴があります。

さて、遺留分制度の話に時に使った明治民法のスライドを繰り返しますが、当時の家制度の中においての遺留分制度は、一応は筋の通った仕組みではあったのです。

何故なら財産は個人のものではなく「家」のものという考え方なので、戸主が勝手に財産を外部に流出させてしまった場合に、家督相続人が一部を取り戻せるという仕組みだからです。

ところで昭和22年以降の現行民法では、この仕組みだけを残して「主役」を変えてしまったので、遺留分制度自体が全く理論的整合性のない「天下の悪法」になってしまい、そのまま現在に至って、法律専門家の誰一人として疑問を呈することのない「タブー」にされてしまいました。

そこで、親愛信託を活用したスキームを考えてみましょう。

まず受益者連続ですが、前回ご説明しました通り、信託法第91条を使って、相続ではない財産承継を実現し、さらに受益権の消滅・発生を何度も繰り返すことによって、例えば親から子、子から孫、孫から曾孫といった「家督承継」を復活させようとするものです。

これぞまさに、信託法の立法過程で言われていた「相続ではない財産承継の新しい道筋」そのものであると言えるでしょう。

ここで信託法第91条後半の「30年ルール」についても解説しておきます。

条文には「当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」

とあり、これを何も考えないで読んでしまったのか、多くの専門家や学者は「受益者連続と言っても30年経過後の次の承継をもって信託が終了してしまうのだ」と言っているようですが、それは違うと思います。

条文には「当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」とあり、「効力」という言葉が、信託行為全体が強制的に終了してしまうことなのか、あるいは受益者連続の定めの効力がなくなるだけで信託行為自体は継続するのかは、少なくとも文章上では明らかではなく、かつ信託終了の要件を列記している信託法第163条には「91条による終了」は書かれていないということもあり、信託行為全体は終了しないと考える方が自然なのではないでしょうか。

また仮に信託行為が終了すると考えたとしても、30年経過後に契約を更新したり、新たに巻き直せば良いだけのことで、実務上は特に問題にはならないのではないかとの考え方もあり、結局はあまり気にする必要はないのではないかと考えています。

さて、受益者連続型信託を使った家督承継ですが、まず財産を分類して家督承継したい部分について信託契約を行うというだけの、最初はごくシンプルな仕組みです。

しかし、この信託は30年どころか、場合によっては何百年も続く可能性があるものですから、当事者はもちろん、支援する専門家側にも大きな覚悟が必要になります。

特に、これまでは契約書を作ったり登記をしたら完了と思って仕事をしてきた専門家にとっては、受益者連続は全く異質な、かつ重い責任が長期間継続するという仕事ですから、決して甘く見てはなりませんし、当然ですが報酬もそれなりに頂戴しないと割に合わない仕事であるとも言えます。

その意味から責任回避を中心思考とする専門家は、ここには足を踏み入れず、一代限りで終了して責任も軽い「家族信託」に流れているのかなと言う気もしていますが、何度も申し上げていますように、信託の真髄は承継型より先にある仕組みなので、これを避けて通ろうとするなら、信託の専門家などと名乗ってはいけないと言っても間違いではないと思います。

是非、心ある専門家の方々は、依頼者のニーズに応えるための方法として受益者連続型信託を臆することなく活用していただきたいと願っております。

これ以上の内容を知りたい方、あるいはご質問、ご相談、さらに講演や原稿の依頼については、よ・つ・ば親愛信託総合事務所までお問合せください。

お待ちしております。