3分間動画シリーズ シーズン2実践編その9

脱・相続と親愛信託~相続に依らず、自分で決める財産承継を実現する~

動画は下記URLからご覧ください。

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3分間動画シリーズはシーズン2実践編その9です。

今回は「脱・相続と親愛信託~相続に依らず、自分で決める財産承継を実現する~」として、親愛信託活用チェックシート財産管理編2―1「承継型信託」の内容を解説させていただきます。

最近は「家族信託」という名称で、認知症対策に限定して一代限りで終了する信託が相当に普及しており、あたかも「家族信託=認知症対策」みたいな先入観や誤解が生じている感がありますが、いつも申し上げています通り、信託の多種多様な機能の中での認知症対策は、ほんの数10分の1の機能にしか過ぎず、言ってみれば携帯電話の機能の中の通話機能だけをもって「これが携帯電話です」と言っているような滑稽な話であり、本当の信託の真髄は承継型以降の機能にあるということを忘れないでください。

このチェックシートでは、資産承継編の最初に位置しており、まさに全ての親愛信託の基本形とも言えるもので、以前は「遺言代用信託」とも呼ばれていたのですが、その後の研究で、遺言とは法的性質が全く異なり、かつ遺言よりも遥かに大きな機能と作用があることが分かってきたためか、現在では「遺言代用」という言葉は使われなくなってきているようですので、ここでは「承継型」と呼んでおきます。

「脱・相続」と言うと、何となく脱法行為や脱税をするみたいな後ろめたい気持ちになる人もあるのかも知れませんが、決してそうではありません。

これは、そもそも「相続とは何か?」という問題から考えなければならないことなのですが、我が国の法定相続制度が「財産は相続人のもの」という明らかに間違った前提に立った考え方になっており、それで迷惑している人も多く、そういった人たちが何とか相続という仕組みから脱したいと考えるのは自然なことであると思いますから、脱法でも脱税でもない極めて健全な形でもって「脱・相続」を実現できる親愛信託への期待が大きくなってきているのです。

自分の財産なのですから、自分で遺産の行方を決めたいと考えるのは当たり前のことですし、また自分の親の相続の際に遺産争いで嫌な思いをした経験のある人も少なくはないと思います。

全ての原因が「法定相続制度」にあるのですが、一般人はそれに気付くのが、実際に相続が発生してからのケースが大多数ですし、それに法律専門家の多くが法定相続制度に何等の疑問を持たないまま受け入れてしまっているという根源的な問題もあるのです。

今の制度では遺言をしたとしても、遺言から外された相続人に「遺留分侵害額請求」をされてしまえば、間違いなく遺産の一部分は奪取され、しかも現金で支払わされる羽目になってしまいます。

幸いなことに生命保険に関しては遺留分請求の対象にはならないのですが、残念ながら金銭以外の財産については保険に回すことができませんから、抜本的な対策にはなり得ません。

「相続対策」として、並の専門家が提案するのは遺言ですが、それでは遺留分に勝てないことは明白です。

このスライドで言えば、遺言で外された「悪い子」は、まず「良い子」に対して遺産開示請求をし、次に特別受益持戻し請求、そして遺留分侵害額請求という「三本の矢」でもって徹底的に攻撃してきますが、残念ながら現行制度では、「良い子」側に勝ち目はありません。

そのことから、責任逃れの意味もあってか、相続対策の相談を受けていながら「遺留分には配慮してください」などという余計なことを言ってしまう専門家が多いようです。

しかし、遺留分を回避したいからこそ専門家に相談しているケースが多いのですから、そんなことを言うようでは専門家として失格だと思います。

また生命保険の専門家の間では、「死亡保険金が遺産の6割を超えると特別受益と見做されて持戻しになる」と、あたかも都市伝説の如くに言われているそうですが、それはあくまでも平成12年に出された最高裁判決で「類推適用されることがある」と述べられているだけであり、ましてや「6割」などという数字に法的根拠は何一つありませんし、その判決の後に保険法が制定され、かつ遺留分に関する民法の条文も変わっているのですから、もう一度「都市伝説」を見直してみるべきと思います。

しかし、いずれにしても民法では「良い子」ではなく「悪い子」、「親孝行者」ではなく「親不孝者」、あるいは「パートナーに尽くす配偶者」ではなく「籍だけ残っている居座り配偶者」を優遇する制度になっており、遺言では遺留分に勝てないことは間違いありませんので、既存の「相続対策」では如何ともし難いとは言えるでしょう。

そこで、親愛信託を活用したスキームを考えてみましょう。

信託法第91条には、次のような条文があります。

「受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」

これは大変重要な条文で、下線部分にあるように、受益者の死亡により受益権が「消滅」し、他の者が「新たな受益権を取得」するのですから、信託受益権が民法上の相続の規定にかからないことを明確に表しているということになるのです。

なお、後半部分の「30年ルール」の解釈については、次の動画で改めて解説します。

さて、この信託法第91条の仕組みを使って、財産を信託受益権に変換した上で次世代に承継させれば完全に民法の世界から離脱しますので、民法の世界に存在する遺留分なり持戻しなりという制度が適用される余地がないということになります。

もちろん現時点は「判例」はありませんので、100%確実に遺留分や持戻しの攻撃を回避できると言い切れるものではありませんし、おそらく「悪い子」は納得せずに訴訟してくると思われ、当事者にも専門家にも、それなりの覚悟が必要にはなりますが、法理論的には完璧に防御できると考えて差し支えないでしょう。

また、ここで専門家が間違ってはいけないのが、仮に100歩も1000歩も譲って、万に一つ遺留分侵害額請求に服することになったとしても、それでもなお遺言と同等の効果は残るということです。

すなわち、親愛信託は少なくとも遺言より優れた対策であるとは言い切れるものであると思います。

どうしても民法の相続の規定と異なる仕組みを作ることに納得できない向きもあろうかとは思いますが、実は信託法が改正される前に立法者の間で「相続とは異なる財産承継ルートを作るべき」という発言があったらしく、最初から「脱・相続」のために信託法が改正されたという経緯があるのですから、専門家の方々は臆することなく「最善の相続対策」として、自信を持って親愛信託をご提案いただければと考えております。

これ以上の内容を知りたい方、あるいはご質問、ご相談、さらに講演や原稿の依頼については、よ・つ・ば親愛信託総合事務所までお問合せください。

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