3分間動画シリーズ シーズン2実践編その5

生活再建と親愛信託~浪費者や未成年者の生活を守る~

動画は下記URLからご覧ください。

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3分間動画シリーズはシーズン2実践編その5です。

今回は「生活再建と親愛信託~浪費者や未成年者の生活を守る~」として、親愛信託活用チェックシート財産管理編1―5「給付制限型信託」の内容を解説させていただきます。

このチェックシートでは、財産管理編の五番目に位置していますが、この使い方にはまだあまり誰も気付いていないのか、実際の使用例は少ないようです。

しかし、財産を持っている親の願いを叶えるための強力なツールになりますので、是非ともマスターしておいていただきたいと思います。

浪費者やギャンブル依存症の人など、お金を持ったら全部使ってしまいたくなる傾向の人は少なくないと思います。

もちろん、自分のお金を何に使おうが自由ですが、例えば親が子に財産を承継させようと思っていたとして、その財産が浪費やギャンブルに使われてしまうのが分かっていた場合、親としては本当に渡してしまって良いものだろうかと迷われるのは当然でしょう。

また、例えば未成年の孫に財産を渡したいが、その親権者が浪費者などであれば、孫の財産を勝手に使ってしまうのではないかと心配されるケースもあると思います。

実は成年後見制度ができる2000年より前の時代には、「準禁治産」という制度があって、浪費者の財産を「保佐人」が一定範囲で管理するという制度があったのですが、現在の成年後見制度では浪費者は対象から外れており、法的な保護制度は存在しません。

また親権者は未成年者の財産を管理する権限があり、それを制限することはできませんから、もし親権者が勝手に財産を使ってしまったとしても、それは未成年者個人の財産であって、明治時代のように「家」の財産ではないので、誰も訴えることはできないのです。

生命保険信託という、死亡保険金を全額渡さずに、信託会社が管理して少しずつ渡してくれる仕組みが存在しており、それを活用する方法も有り得ますが、あくまでも死亡保険金に関してのことに限定されますので、必要によって併用ということで宜しいかと思います。

さて、そこで親愛信託が持つ「制限機能」の出番です。

民法の所有権には制限を掛けることができませんが、信託受益権には信託契約でもって各種の制限を掛けることが可能ですから、例えば「受益者への給付は毎月〇〇円以下」というような契約内容にしておけば、受託者にはその契約を守る必要が生じ、受益者は「もっと寄越せ」という権利がなくなるのです。

その意味から、この給付制限型信託については、当初の信託契約の内容の吟味、特に信託の「目的」の設定方法、そして受託者の選定が最も重要な課題となります。

例えば信託契約で何も規定をしていなければ、信託の変更や終了に関しては信託法の条文の通り「委託者と受益者の合意」で可能ですから、この部分については「別段の定め」として「信託の変更や終了は受託者と受益者の合意で行う」といった内容にしておかないと、受益者になった浪費者などが「信託終了」と言ってくる可能性が出てきます。

これは実は成年後見人に対する部分でも同じで、成年後見人に被後見人の受益者としての権利を行使する権限が存在するのか否かの議論はあるとしても、信託の変更や終了に関しての別段の定めがないと、後見人によって信託が終了させられてしまうリスクがあるということです。

また、受託者が給付制限の規定を厳格に遵守してくれないことには、この信託の意味を為しませんから、受託者の選定に関しては慎重を期す必要があると思います。

意外と専門家も勘違いしているのが、「信託財産は誰のもの?」という部分です。

確かに信託は「権利」と「名義」とを分離する仕組みですから、「財産権」は受益者にあると言えるのですが、あくまでも信託財産自体は「誰のものでもない財産(Nobody‘s Property)

」であり、かつ受益権には所有権とは違って制限を掛けることが可能ですから、民法の考え方とは根本的に異なっているということを改めて認識していただきたいと思います。

そのことから、仮に浪費者などが二次受益者になったとしても、受託者さえしっかり給付制限を守っていれば、当初の信託の目的は達成できるということになるのですね。

これが基本的な生活再建型信託の設計図です。

このスキームでは、信託財産を収益が出る不動産にして、受託者が収益で増加した信託財産の中から「特定の者」に金銭を給付するという形態にしていますから、本来は信託財産から発生して利益の全てを受けるべき受益者にとっては、そのことが「制限」となるという仕組みですね。

この制限は、受益権が二次受益者以降に移動しても継続されますが、二次受益者を浪費者など本人にする場合で、もし次の代でのトラブルが心配なのであれば、受益者代理人を置いて受益者自身の権利の行使も制限しておくという方法も考えられるでしょう。

浪費者対策と似たニーズとして、未成年者が受益者になった場合の親権者との関係を制限したいということがあります。

成年後見人は被後見人の全てを代理するのではありませんから、受益者としての権限を行使できるか否かは議論になるところなのですが、親権者は未成年者の完全なる法定代理人ですから、当然に未成年者に代わって権限が行使できます。

そのことから、未成年者に受益権が渡ると、実質的には親権者が受益者になっているのと同様の状態が発生することになり、もし親権者が浪費者などであれば、未成年者の財産を「使い込む」という事態も考えられます。

そこで親愛信託の制限機能を生かして、受益権自体に制限を掛けてしまえば、親権者の権限も一定範囲に抑え込むことが可能になるということですね。

もちろん、元々の財産所有者である当初受益者の意思次第ですが、例えば未成年者である二次受益者が成年に達した段階で制限を解除、もしくは信託自体の終了という仕組みを作っておくことも可能です。

受益権に対する制限と言えば、例えば極端な例として「受益権を日本国籍を持つ者以外に譲渡してはいけない」という条項を作っておけば、日本人以外への受益権の譲渡はできないということになりますから、今や社会問題になっている外国人による土地所有を抑制することが可能になりますし、受益者変更権者を設けておき、「受益者が〇年以上にわたって〇〇に対する連絡を断った場合には受益者を変更する」という条項を作っておけば、行方不明の受益者の受益権を回収することができて、所有者不明不動産問題も解決できます。

その他にも制限機能の使い道は無限に存在していると思われますので、あとは事案ごとのアイデア次第ということになるのです。

これ以上の内容を知りたい方、あるいはご質問、ご相談、さらに講演や原稿の依頼については、よ・つ・ば親愛信託総合事務所までお問合せください。

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