3分間動画シリーズ解説編第4回:親愛信託の「受益権」とは?

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第4回は「親愛信託の仕組みその4」として「親愛信託の「受益権」とは?~所有権とは異なる受益権の特性と扱い方~」を解説します。

信託受益権とは、実は大変に難しい権利なのです。

信託法をあまり理解していない人たちは、「受託者=信託財産の所有者」「受益者=受託者に対する債権者」というように簡単に考えておられるようですが、そうではありません。

まず大前提として、信託行為は委託者と受託者とで行うものであり、受益者は当事者ではないということに着目してください。

民法の世界では、ごく一部に不法行為とかの例外が存在するとは言え、一般的に「債権」とは債権者と債務者との契約行為があって初めて成立するものであり、信託では契約当事者ではない受益者に突然受益権が発生するのですから、単純な債権とは異なることは明らかですし、さらに当事者ではない委託者と受託者によって受益権の内容に制限を掛けることができるという部分も、受益権について「債権の一種」であるとの説明を不可能にしています。

さて、信託法では、受益権の説明として「受益債権」と「受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利」の複合体であるとしています。

「受託者その他の者」という文言があることでも分かるように、受益権は単なる債権や請求権ではなく、信託法特有の複合した権利であるということですね。

敢えて例えるとすれば、信託財産と受益権との関係と一番よく似ているのが、株式会社と株主との関係だと思います。

信託財産を株式会社、受益権を株式、受益者を株主、そして受託者を役員と考えるのです。実は英米法の世界では信託財産に「疑似法人格」を認めていますので、その説明で全てを言い表すことが可能なのですが、我が国の信託法は少し違うので、特に「債務」に関する部分で矛盾が生じてきます。

そのあたりが「信託財産責任負担債務」の問題に繋がるのですが、その解説は別の機会に譲りたいと思います。

いずれにしても、受益者は信託財産に関する全ての権利を持っているということではありません。

よく「受益者はいつでも信託財産を払い出せと請求する権利がある」と勘違いしておられる方を見受けるのですが、そうではなく、あくまでも受益者は「信託財産から生じた利益」を、しかも信託行為で決められた範囲内で給付を受けられるだけであり、その枠を超える給付を受けようとするなら、信託を終了して所有権に戻すしかないということを、是非ご理解ください。

信託受益権とは、個々の信託財産ごとに存在するのではなく、一つの信託行為の中に入っている信託財産全体に対して一つの受益権という考え方になります。

例えてみれば、一つの皿に複数の食材が乗せられており、それらの全体が一つの「料理」であって、料理の価値は全体を指すものであり、個々の食材を指すものではない、という感じでしょうか。

実はこの点を勘違いしている専門家が多く、例えば「受益者が死亡した際には、不動産に関する受益権はAに、金銭に関する受益権はBに」というような契約文言を見掛けることがあるのですが、まさに「皿に乗せられている食材のうちの一つだけの受益権」が存在しているという前提に基づく誤った考え方ですから、残念ながらそれは無効です。

すなわち、信託受益権は一つしかないので、一つの信託行為に対して複数の受益者が登場すれば、受益権を共有するしかないのです。

もっとも、受益権が共有になったとしても、信託財産を管理する権限があるのは受託者のみですし、信託全体は受益者の意思に関係なく信託行為の定めで動くだけなのですから、所有権の共有のような不便はありませんし、直ちに問題になるものではありません。

もし、信託財産ごとに二次受益者を決めたいということであれば、最初から信託契約を複数にしておく必要があり、そうすれば、契約ごとに二次受益者を決めることが可能になります。

その意味から、最初に信託行為をする段階で、各信託財産にかかる受益権の将来の行方まで想定した上で組成しなければならないということになるのです。

ここでも間違いやすいのが、信託契約が複数あれば契約書も複数必要なのかと言うと、そうではなくテクニカル的に工夫をすれば1枚の契約書の中に複数の契約を入れ込むことは可能です。

そして、既に一つの信託契約で締結してしまった後であっても、信託分割という多少複雑な手続きを踏めば、信託財産ごとに別の契約に分割することも不可能ではありませんが、やはり最初から複数の契約をしておくべきでしょうね。

そして信託が終了すると、信託法の世界は消え去って、信託財産は民法上の財産に戻ってしまい、それは残余財産帰属権利者に引き継がれるということになります。

その際には、もう信託は存在しないのですから、財産は個々の所有権の状態に戻っていることから、残余財産帰属権利者に関しては、受益者とは違って財産ごとに指定しておくことも可能ということです。

このあたりも信託の仕組みをよく理解していないと間違いやすい部分ですから、十分に勉強しておいてください。

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