マリンの部屋番外編:5分間動画シリーズの解説第7回

第7回の解説よ!

今回は「遺言制度を考える」。

遺言も、成年後見制度と同じで、とっても意義があって重要な制度だと思うんだけど、あまり一般人には受け入れられていないみたいだし、問題点も数々あるんで、これも成年後見制度と同じく、親愛信託との併用をお薦めしてるのよ。

遺言とは、民法で定められた制度で、自分の死後の財産の行方を決めておくために、元気なうちに作っておく文書のことなの。

ところが、「遺言」って言葉は、「遺書」っていう、とっても縁起の悪い言葉と似ていることもあって、我が国ではあまり普及していないというのが実際のところなのね。

これまで何度も「遺言ブーム」とか言われてた時期もあったし、今だって「終活」って言葉が流行っているけれど、それでも「鴛鴦」第2章に出てきてたみたいに、家族が「遺言しましょう。」って言った途端に「俺を殺す気か!」って怒り出す親が少なくないみたいで、言葉のイメージって怖いものね。

普通は「ゆいごん」って読むものなんだけど、実は正式な法律用語では「いごん」って発音するので、偉い専門家の先生方の言葉を聞いて、一般人はさらに「遺言は縁起が悪い」って思っちゃうのかも。

その点、英語圏では遺言を「WILL」って呼んでて、まさに自分の未来のために書いておく前向きの文書というイメージがあるから、遺言の普及率は日本とは桁違いなのよ。

アメリカなどには法定相続制度がなくって、相続になったら「プロベイト」って呼ばれる裁判所の手続きになってしまって大変という理由もあって遺言や信託が普及しているんだけど、我が国とは違って、財産を持っている人は最低限の責任として遺言だけは作っておかなければという風潮があるんだと思うわ。

遺言をしておけば、自分の死後の財産は「一応」は遺言書に書いてある通りに承継されることになるの。

それに、遺言があれば、普通は必要になる、亡くなった人の子ども時代からの戸籍とか、相続人全員の印鑑とかは必要なくなって、相続の手続きがとっても簡単になるってメリットもあるわ。

で、どうして「一応」なのかって言うと、我が国の民法では「財産の行方は国が決める」って大原則があって、人が亡くなったら自動的に国が決めた「法定相続人」に権利が移るという建前になっているから、遺言とはその原則を外すための「例外措置」みたいな感じで捉えられているからなの。

そして、その法定相続人という国が勝手に決めた人たちの権利が異様に強くって、遺言をしたとしても、「遺留分」という権利には勝てないことになっているから、結局は元々の財産所有者の思った通りには承継させることができないって事態に陥ってしまうケースがあるのよ。

次に遺言の方式なんだけど、実際に使われている方式としては、大きく分けて三種類あるの。

自筆証書遺言は、とにかく自分で紙に書けば法的に通用する遺言になるんだけど、これが簡単なようで難しくてね、少しでも間違っていて訂正を正式にしてなければ無効になるとか、1枚しかないから行方不明になったり、場合によっては隠されちゃったり、偽物だ!って言い出す人が現れてくるとかのリスクもあるし、有効にするためには遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認手続きという面倒な作業が必要だったり、結構大変なのね。

その点、公正証書遺言なら、公証人さんが証明してくれるから間違いないし、検認手続きも不要だから確実なんだけど、遺言者以外に証人2名が必要で、誰にも内緒では手続きできないとか、高額の財産だと手数料が高くなるとかの問題点もあるわ。

2020年7月に、法務局が自筆証書遺言を預かってくれる制度がスタートしているので、これを利用するのもお薦めかな。

それからね、遺言書の中で「遺言執行者」を決めておくと、後の手続きがさらに簡単になるからお薦めだよ。

遺言執行者には誰でもなれるけど、信頼できる専門家に依頼するのもいいかも知れないね。

ただ、その専門家が個人だと、遺言者より先に亡くなってしまったら終わりだから、複数の人を指名するか、あるいは法人を指名した方が間違いないかも。

先にも言ったみたいに、遺言の最大の弱点は「遺留分」に勝てないということね。

この遺留分制度も、最近の民法改正で変更があって、とりあえず現金で支払えばよくなったので、少しだけ効力が弱まってはいるんだけど、やっぱり財産を一方的に取られてしまうという点では変わらないの。

でもね、遺言者がその人に財産をあげたくなくって敢えて外しているんだから、その人には外されるだけの理由があるんでしょうし、そんな人が法律の規定を振りかざして財産を取りに来るというのは、やっぱりおかしいと思うな。

この遺留分制度の問題点については、また別の動画で解説するけど、制度自体に問題があるということは覚えておいてね。

遺言とよく似た仕組みとして、死因贈与契約っていうのがあるの。

これは贈与契約の一種なんだけど、贈与する人が死亡することを条件に贈与される人に財産が渡るというもので、実質的には遺言と同じ効果になるのね。

ところが、遺言は一人でできる「単独行為」と呼ばれる一方的な意思表示だから、後からしたものが有効になるのに対して、契約は二人以上の当事者で締結するものだから、先にした契約の方が優先されるということで、矛盾が起きてしまうの。

そこで民法は、第554条という条文を作って、「死因贈与契約に限っては、契約なんだけど、特別に遺言と同じ扱いをしますよ」と決めているのね。

だから、他の契約とは違って、死因贈与契約だけは後でしたものが優先で、遺言と同じように「相続」として扱われるの。

ちなみに信託契約は民法上の契約ではなくて、民法第554条の適用範囲外だから、先にしたものが優先だし、遺言と同じ効力ではないから、相続にもならないのよ。

では、死因贈与契約と遺言のどこが違うかって言うと、死因贈与契約は特に自筆とかする必要がなく手軽に作れるから、緊急の際に「とりあえず」の文書として使うことに向いているし、また死因贈与契約は、遺言では不可能な不動産の仮登記ができるっていうメリットもあって、実は使い道が沢山あるの。

そして親愛信託ね!

遺言や死因贈与契約と親愛信託とは、併用してこそ生きるものだと思うの。

何故かって言うと、信託は特定の信託財産に対してだけ効力を有するもので、遺言みたいに「死亡時の全財産」っていう決め方はできないから、どうしても漏れる財産が出てくる可能性があるし、それに「財産」じゃない「債務」については信託ができないという問題があったり、さらに財産以外の部分についても遺言の効力が及ぶケースもあり、また心理的な希望とかも書いておけるから、とても便利なの

是非、遺言と死因贈与契約についても勉強して理解しておいてね。

ではまた明日!

※これが有名なマイケル・ジャクソンさんの遺言書ね!これって実は「遺言信託」というもので、この遺言書でもってマイケルさんの遺産は全部信託財産になって、その受益権がお母さんやお子さんや慈善団体への寄付に充てられたの。だからマイケルさんは遺言と信託を駆使して遺産争いを回避されたっていうこと。さすがムーンウォークできるくらいの人は普通じゃないね!!