二次元セミナー~親愛信託活用マニュアル講座~第41回

P178~181:「親愛信託事例1-11遺留分給付型信託」から(初版版ではP174~177)

【この手法で対応できる問題】

いよいよ、まさに親愛信託の真骨頂である、遺留分対策型信託に入ります。

これは、前回申しました「民法絶対派=親愛信託反対派」にとっては絶対に認めることができない仕組みであり、何としてでも潰そうと画策し、例の判決に関する偽の情報の流布までしている部分でもありますから、これを使いこなそうとする専門家は、かなりの覚悟を持って事に当たらなければならないと思っておいてください。

ただ、考えてみれば、最悪の事態が発生して訴訟で遺留分請求が認められるような事態になったとしても、それは遺言をした時の効果と同じになるというだけで、信託契約自体が行為能力喪失などの理由で無効とならない限り、遺言より未満の効果に落ちるという心配はない、すなわち「勝ちと引き分けしかなく、負けがない勝負」なのですから、そこまで恐れる必要はないと言えばないのですが、訴訟は最初から勝てない前提で考えてはならないので、あくまでも「信託は相続ではないので遺留分請求はできない」という絶対的なスタンスで考えていただきたいと思っております。

親愛信託を用いた遺留分への対策としては、大きく分けて二通りが考えられます。

一つは遺留分請求権者を完全に除外して、請求してきたら堂々と法廷で戦う「対抗型」で、もう一つが今回ご紹介する、一旦は遺留分相当割合を給付しておき、受益者連続の仕組みでもって、その者の死後には元の系列に受益権を戻すことによって、遺留分請求自体を封じるという「給付型」です。

【事案の概要】

典型的な、親孝行の長男と親不孝の次男の二人の子が居るケースです。

こんな親不孝な子に限って、自分の権利だけは主張してくるもので、さらにマズいことに最近ではテレビの法律相談番組などで「あなたには権利がある。訴えてやりなさい!」などと煽る傾向が強くなってきていますので、親不孝者も当たり前のように親の財産の半分は自分のものと思い込んでしまい、まさに日本の美しく、世界に誇るべき社会道徳は何処に消え去ったのかという酷い世界になってしまっています。

そして、このような資産家は、往々にして収益不動産などの高度な管理が必要な財産を持っておられ、承継する者を特定しておかないと困るという事情があったりするものなのです。

【親愛信託以外の方法を利用した対策】

一般的には遺言以外に方法はなく、遺留分請求に対して丸腰で挑み、100%敗北という結果しか見えません。

教科書的には「相続人廃除」という手続きを使う方法も有り得るのですが、現実の裁判所の取り扱いとしては、単に「親不孝者」というだけでは相手にもされず、例えば親を殺そうとして逮捕されたくらいの大変な理由がないと廃除の対象とはされないようで、そのあたりにも民法の法定相続の考え方と、健全なる社会道徳との間の齟齬を感じるものです。

このケースで普通に遺留分請求が認められてしまうと、全財産の4分の1は次男の手に渡ることになりますので、収益不動産を守りたいと思うなら、親孝行な長男が取得した相続財産の現預金は全て消えてしまい、さらに不動産を担保にして借金まで背負わされることになりますが、何と理不尽な話なのでしょうか。

【親愛信託を利用した提案】

このケースは、敢えて受益権の4分の1、すなわち遺留分割合相当分を次男にあてがい、財産の管理は長男が適切に行いながら、次男生存中は収益不動産の賃料の一部などを給付しておき、死亡すれば受益権を長男側に戻すという仕組みです。

普通に考えれば、これであれば次男は受益権の4分の1を取得していますから、遺留分請求自体ができないということになります。

実は、例の変な判決のケースが、配役は多少異なりますが、内容はまさにこれで、さらに親は親孝行息子との間で信託契約の他に「全財産の死因贈与契約」を重ねて締結していました。

仮にこのケースの登場人物に当てはめてみますと、原告がC、被告がBということです。

原告は遺留分請求ができないことは分かっているので、何としてでも親愛信託自体を潰そうとして、親の行為能力を攻めましたが、そこは公証人の関与などもあって全面的に棄却され、最後の手段として「公序良俗違反」を言い出したということなのです。

地方裁判所も困ったのでしょうけれど、両方の顔を立てる方法とでも思ったのでしょうか、このケースで言えば「収益不動産」については信託契約も受益者連続も全て有効、ただし「自宅部分」については収益を生まないという理由から「価値のない財産を当てがった」と見做して、何故かここでいきなり中間の理論を全部抜かして突然に民法第90条を持ち出し、「公序良俗違反で部分無効」という判決を出したのです。

つまり、主要財産である収益不動産の受益者連続型信託については完全に有効であり、かつ仮に自宅部分の信託が無効になっても死因贈与契約が生きているので原告が取得できる財産の割合に変化はなく、原告はその部分が不満、自宅部分のみが契約無効という非論理的な部分は被告が不満ということで控訴となり、結局高等裁判所で「信託全部有効」を前提とした和解が成立して、金銭の授受で終わったというのが真相なのです。

そういったことで、そもそも遺留分請求の訴訟ではなく、和解調書の中に遺留分という言葉自体が何処にも出てきませんし、和解でもって一審判決は完全に効力を失っているのです。

つまり、流言の中では、原告にとって都合の悪い事実は全て包み隠して、あたかも公序良俗違反の判決が確定しているように見せかけたいということなのでしょうが、是非とも心ある専門家の皆さんには真実を知っていただきたいと思っています。

【親愛信託を利用するメリット】

実際に訴訟になりましたが、やはり受益権を割り当てている限り、直接的な遺留分請求訴訟にはなり得ないものと思います。

この方法ですと、親孝行息子のBさんは受託者として親から承継した財産を正しく管理しながら、その受益権の4分の1相当額のみを、弟Cさんの生存中に限って給付すれば済むということになります。

ただ、相続税の申告は基本的には相続人全員ですることになっていますので、仮にCさんが全く協力しないという事態に陥ってしまうと面倒なことになりますので、ここだけはご注意いただき、協力しないことが明白とか、あるいは音信不通といったケースでは、次回にご紹介する完全に一部の相続人を除外する「遺留分対抗型」を選択されるべきと思います。

それでは、また明日。

(つづく)

≪本日の学習ポイント≫

  • 理不尽な制度・遺留分との戦いこそ親愛信託の神髄であり避けて通るべきではない。
  • 信託契約さえ万全であれば、少なくとも親愛信託が遺言の効果を下回ることはない。
  • 民法が規定する相続人の廃除は、実質的には機能していない制度である。
  • 相続税申告の状況によっては、遺留分給付型が税務申告の妨げとなる可能性がある。

雑感

今日は終戦記念日でもあり、本文が親不孝者と戦う話なので、雑感は世がまだ平和だった頃の思い出ということで、地方競馬場巡りの話に戻しましょう。

姫路競馬場は長い間レースは行われず、コースは閉鎖されていて、週末にJRAの場外馬券を売るだけの場所になっており、私が行った時にはJRAの担当者が地方競馬場巡りスタンプラリーのことを知らず、押印してもらうのに一苦労したものでした。

その頃にはコースの真ん中に水路が流れていて、とても復活できそうな感じはなかったのですが、今年の1月に8年ぶりにレースが再開されたという嬉しいニュースを聞きました。

しかし、また現在では開催が無くなっており、少し心配しています。

下記のウイキペディアによると、昔は全国に多数の競馬場が存在しており、中には目黒とか鳴尾とか、今はレースの名前に残っている競馬場もあるみたいです。

廃止された競馬場と言えば、島根県の益田でたまたま廃止された直後の益田競馬場の近くを通ったことがありますが、何とも侘しい感じでした。

競馬場が廃止されれば競走馬は職を失うことになりますので、今残っている15ヵ所の地方競馬場は何とか死守できればと思って、ほんの僅かですが投票を続けて協力しています。

私の買った馬券が当たっても外れても、競馬主催者の実入りは同じですから、本当は当たった方が良いのですが、地方競馬は情報が少なくて、そこは難しいところなのです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%BB%83%E6%AD%A2%E3%83%BB%E4%BC%91%E6%AD%A2%E7%AB%B6%E9%A6%AC%E5%A0%B4%E4%B8%80%E8%A6%A7